本書は、脳に関する知見を広げてくれます。
私が気に入った「記憶力を高める頭脳トレーニング」を書き出します。
記憶について
私たちが何かを覚えるためには、覚える対象を ”記号化” して頭に入れます。頭に入ったものは、取り出されるまで脳に保存されます。
この記憶をより完全なものにするためには、記号化、保存、想起といった作業だけでなく、言語と視覚の記憶システムをフルに使わないといけないのです。言語と視覚イメージを使って記憶する習慣づけをすることによって、脳の中に二つのバックアップシステムを持つことができるのです。
学習したいと思う対象と、すでに持つ知識とを結びつけることで、記憶力は高まります。例えば、何かを読んだり聞いたりするときに、自分がすでに知ることと関連づけて考えることで、情報がすんなりと頭に入れることは、皆さんも体験したことがあると思います。
効果的な勉強法
著者は「PQRST」と呼ばれる勉強法を提唱します。
<下見> Preview
記事や本を読み始める前に、各段落の最初の行や、最初と最後の段落全体に、ざっと目を通す。そこに書かれている主旨をおおまかに把握する。
<疑問> Question
そのテーマについて自分が何を知っていて、それまでにどんだものを読んだかを洗い出す。もっとも重要なのは、そのテーマについて自分が何を知りたいか、ということ
<読解> Read
自分が知りたいことを意識しながら、積極的な姿勢で読む
<記述> State
読み終わったら、内容を再考して、もう一度そのテーマについてすでに知っていることと関連付けてみる。自分が知りたいと思ったことに、この文章が答えているかどうかを自問してみること
<テスト> Test
今読んだ文章をどれだけ覚えているか、自分でテストしてみる
潜在記憶の活用法
さらに、脳には「潜在記憶」という意識をしなくてもある種の情報を覚えられる記憶システムがあります。潜在記憶は高齢化や病気、脳の損傷といった影響を受けにくいため、記憶力がとぼしい人でもこのシステムを使えば、物事を覚えられるようになります。
ここで筆者は、潜在記憶を有効に利用するためには、学習しているときにミスを犯してはいけないと述べます。
潜在記憶は意識的なシステムではないため、ミスを犯すと簡単には修正をできず、もし途中で誤った推測をすると、その誤った反応を保持してしまい、それが継続的な学習を妨げてしまうのです。
記憶力の向上のために大切なことは、「誤りのない学習」をすることです。推測を最小限に抑え、正しい回答を得る可能性を最大に高める方法で勉強するべきでしょう。
例えば、20個の単語を新たに覚えるとします。まず単語を2つ覚えたら、新しい単語を覚える前に、その2つの単語をテストします。そして自信のある単語について定期的にテストを繰り返して確実に記憶し、その数をゆっくりと増やしていきます。こうした着実な学習法は、20 の単語を一気に覚えてその過程でミスを犯すよりも、ずっと効果的なはずです。
高度な熟練技術を身につけるには
高度な熟練技術を身につけるためには、一定の練習を最低10年間続けることが必要だと言われています。これは音楽、チェスや科学、文筆行から芸術に至るあらゆる分野に当てはまります。熟練した技能を磨く上で、生まれつきの才能はそれほど重要ではなく、むしろ、長い時間をかけて行われる入念な訓練こそが、最高レベルの功績を生み出すということなのです。
ある一定レベルの知能さえあれば、あとはその分野における粘り強さや動機づけ、あるいは努力こそが、天才をつくるのです。
虐待について
虐待を受けた子供たちは、自分も人を虐待するようになります。これは、親は子供を殴ることによって、子供の脳に暴力的な傾向をプログラムしているのです。
性的虐待についても同じことが言えます。世間をにぎわす性犯罪者の多くは、彼ら自身が子供ことに性的虐待を受けています。もちろん虐待を受けた人の大多数は、そのような忌まわしい犯罪は犯しません。しかし、虐待の経験が脳の重要なバリアーを破壊することがあるのは事実です。そして、そのバリアーの1つが「共感」、つまり他人の気持ちに身を置いて考える能力なのです。
子供を見ると自分が経験したことをどれほど真似ているかがわかります。親に叱られた女の子は、同じように人形を叱り、けがを手当てしもらった男の子は、似た方法でおもちゃの犬の手当てをします。大人に虐待された幼児も同じで、暴力にさらされた子供たちは同じような行為を他人に、そしてやがて自分の子供に向けることを学んでしまいます。
このように、冷酷な残忍性もほかの感情と同じように、脳の神経回路網にプログラムされる危険性があります。問題は、いったん脳の仲に攻撃性が確立されると、それが半永久的に消えないことです。
この本からは、ためになった事が多く、ほぼ抜き出しになってしまいました。
著者の他の本も読んでみたくなるそんな一冊でした。