ビジネスマンの皆さまへ捧げる読書日記

私が読んだ本のなかで役に立ちそうなものを紹介します

「勉強力をつける―認識心理学からの発想」

 著者は教育心理学者としてご活躍をされた方です。

ビジネスマンだけでなく、大学や高校の受験勉強にも参考になる内容がいくつかあり、自分が実践できそうなものを取り上げます。


ワクチン型学習法

失敗を避けたり、落とし穴に気づいて、 深い理解、たくましい認識を形成する方法です。
学んだり教えたりして認識を形成する力を養うためには、まず、つまずき、失敗、誤解とたえず戦う経験が必要です。

正答への論理的道筋を理解するだけでは認識の半分しか形成されません。
テーマ、問題ごとに、どんなつまずき、誤解、失敗が起きるかを学ぶことによって、失敗、誤答、誤解に対する免疫体質をつくりあげることができるのです。


ではどうやって、やるのでしょうか。

それは、失敗、つまずきや誤答を積極的に活用することです。「失敗、誤答、つまずきの研究」をすることです。個々のテーマや問題ごとに、そこで起きやすい間違いやつまずきについて、「なぜ失敗か、どうして間違いなのか、どのような論理の筋道をたどってそうなったか?」を追求して、明らかにします。


では、どのタイミングでやるのでしょうか。

学習が少し進んだ次の段階で、その主題にはどんな落とし穴があり、どうすれば回避できるかを研究します。これによって、深い理解、たくましい認識が発達していくのです。


こちらは、「ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書 なぜ学び、何を学ぶのか」で似た内容を読んだ記憶があります(定かではなく申し訳ありません)。
数学の勉強をするとき、間違えた問題があったとき、A4 のルーズリーフにその問題と正解を書きます。加えて、「問題を解くポイント」「なぜ自分はこの問題を間違えたのか」も書きます。そして、次のときに問題以外の個所を隠して解き直します。
私は、大学で使われるような統計学の教科書に書かれてある問題をこの方法を使ったところ、驚くほど問題を解けるようになったのを覚えています。



まとめ直しをやる

教師の説明などを後から自分のマイペースでまとめ直す。まとめ直すと自分になじみの深い認識におきかわり、主題を捉えなおすことができます。

マイペースとは自分の思考の道筋でもあるため、自分の辞書を使ってまとめ直すことによって、すぐには成功しないにせよ、その人の認識の働きに自然にそった命題が生まれてくる。
マイペースによって、自分の言葉に置き換わるだけでなく、言葉と言葉とのかかわりが確かになって命題が発展し、自分流の思考の流れができあがるといいます。

例えば、教科書や参考書、教師の板書は、重要なポイントを要領よくまとめてある。しかし、その書き方、論理の組み立ては、作成した人の認識の働きを自然に反映したものになっています。このため、テキストや参考書の重要語句にマーカーをつけて、書かれている通り、丸暗記することは、異物を強制的に飲み込むのに似て、必ずしも優れたやり方とはいえないのです。おそらく、異物感が残った「少しわかった」状態が続くことになります。
こうした事態を避けるためには、教科書の枠組みを定着させるために、かなりの反復練習がいるのである。それを節約するのが、自分の内面にある辞書を生かして、マイペースでノートや手帳にまとめ直し、自分流の考えの筋道を造りあげるという方法である。こうして学習の終わりに自作の教科書が出来上がれば最高です。


この方法は、結構時間がかかるでしょう。もし上記をやりきったときには、教師や参考書を作った人と同じレベルなくらい理解が深まるのではないでしょうか。


繰り返しの修練、練習は、エキスパートへの鍵

人間の記憶を「短期記憶」と「長期記憶」に区別されています。しっかりと憶えるためには、短期記憶に入ってきた知識を長期記憶に転送する必要があります。その方法の一つは、「有意味学習法」です。これは、内面にすでにある認識と結び付けることで、世にいう記憶術はここが工夫されています。もちろん、結びつきを強めるためには、何回かの反復練習が必要となります。

この有意味学習法をする前提として、豊かな既有知識があって、関係を見つけ出す認識があることがあげられます。このため、既有知識の大きさや関係発見の力によって、個人差が生まれます。誰でも可能なやり方として、何回も反復して覚え込むことです。何度も練習をすると、不思議にも無意味な数字列でも長期記憶庫の中へ移って行くのです。

結局は、全ての人に開かれる熟達の方法とは、反復練習、リハーサルであり、それを軽蔑する人は高い実力をつけることができないのです。

 

マックガイアーの話

社会心理学者マックガイアーは、いろいろと他の人に説得されて、人間が意見や態度を変えたり、自説を曲げたりするメカニズムに強い関心を持っていた。

例えば、いつも自分と異なるさまざまな意見に触れている人は、自説と衝突する主張に強力に説得されても、なかなか自分の考えを譲ろうとしない。それに対して、特定の見方や態度にこりかたまってい、その意見にしか耳を貸さなかったイデオロギー的な人の方が、かえって説得には弱くて、いとも簡単にあるとき突然変わってしまう。

マックガイアーはこうした人間の見方や態度の変容を理解するために、医学ではなじみの既有知識「ワクチン接種」の免疫理論を援用することを思いついた。いつもいろいろな異説に感染していると、自然にそれらに対して抵抗力、耐性ができあがり、説得されにくくなると類推したのである。

加えて、「食後に歯を磨くべきである」などの、誰もが信じて疑わない、ゆえに反論を経験してない自明の理は、強い異説にさらされると簡単に信じられなくなることを実証した。

 

新書で「○○○○をやるな」といったたぐいのものを見かけますが、この心理を使ったものなのでしょう。

 

相似形(メタ認識)を発見せよ

それぞれの状況で身に付けた知識は、いろいろな文脈、場面と密接につながっています。このため、その文脈や場面に拘束されて、他の場面で転用が難しいのです。知識を抽象化することで、この束縛から解放されて、一般性のある高次な知識、メタ認識に変えることが必要です  

応用力を働かせたり、認識を深めるためには、学習内容をよく検討して、相似形を発見することが肝心なのです。
「たえ話し」で人が説得されるのは、こうしたメタ認識を使っているためです。認識を発展させたり、理解を促すためには、この相似形というメタ認識を使うことが決定的に重要なのです。

 

 

勉強力をつける―認識心理学からの発想 (ちくま新書)

勉強力をつける―認識心理学からの発想 (ちくま新書)