ビジネスマンの皆さまへ捧げる読書日記

私が読んだ本のなかで役に立ちそうなものを紹介します

「対話力 私はなぜそう問いかけたのか」を読んで

しばらく勉強ネタが続いたため、今回はコミュニケーション力と言いますか、対話力について取り上げます。

 

著者は中田英寿氏の現役時代を書いたりとアスリートのノンフィクション作家というイメージが強いです。 

いくつか参考になる点を書き出します。

 

気づかいのススメ

相手を気遣うことによって、相手は欲している情報をより早く発信してくれるようになり、結局は相手への気遣いは良い方向として自分へ返ってくると言います。

 

例えば、挨拶をきちんとする、酒席やタクシー内での席順を判断する。美しい作法で食事する。こうした一つ一つの行為によって、人が受け取る印象は変わります。それぞれの行為が一つ一つ、相手へのメッセージになるからです。話を聞く場で、相手を自然に上座に案内することができれば、それは「自分の立場をわきまえている」というメッセージになります。

 

マナーは人間関係を豊かにする基本設定であり、言葉の前段階のコニュニケーションです。このためにも、気になる事があったら見直すために手許にマナー本を一冊置いておくことを勧めています。
外国の方に話を伺うときには、その国のマナーを予め学んでおくことも大切な心遣いでしょう。例えば、子供の頭をなでることは、タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマーなどでは子供の頭を触ってはならない。と言われます。頭にはその人の霊が宿ると考えられていて、そこに他人が手を触れるのは大変な侮辱になるようです。

著者のように世界中で色んな人にインタビューをするためには、マナーを知っておく学んでおくことはとても大切なことなのでしょう。もちろん、世界を相手に仕事をしていない人でもプライベートで外国に行くだけでなく、日本国内でも外国のマナーを知ることの必要性を感じる事があるのではないでしょうか。


もちろん、同じ日本人同士でも、年齢や性別、その人やその属する集団が人間関係やマナーにおいてどのような感覚を持っているかも重要で、それに合わせて自分の振舞い方を変えなくてはならなくなったり、向き合う人の文化的バックグラウンドを事前にチェックしておくことも大事だと述べています。

 

初対面の人と話すために

 

初めて行った場所で、初めて会った人の話を聞き、会話を進めるために必要なのことは、その場で得られる情報です。そこで大事になるのが、自らの体感です。その場所や土地の空気、気温、湿度、風邪、人々の表情や話し方、全て関係してきます。自分の身を持って何かを感じた「感覚」が、対話の大切な要素になります。

「寒いでしょう」という第一声に、「本当に寒いですね。私は寒さが大の苦手なんですよ」と応えれば、さすがに言われた方は次の言葉に困るでしょう。社交辞令は、円滑に言葉を交わし、人間関係のバランスを保つためのメリットの大きいもの。
だから、「空気が澄んでいて、凛とした気持ちのいい寒さですね」と応えれば、相手も「十勝には日高山脈があるので、雪雲が来ないんですよ。雪は降るんですけど、晴れた日は雲一つないんです。・・・・」と会話が続くようになる。

何気ない会話の中にも、かけがえのない情報が眠っています。始まりは、天気の話で十分なのです。まず、ボールを投げてみる。返ってきたボールを、ストレートに投げ返す。この繰り返しによって、かけがえのない情報が得られ、お互いの心が開かれる対話が紡がれていきます。

 

知識や機転がないからと思うのではなく、相手からの言葉をきちんを受け取り、誠実な言葉できちんと返す。対話はこうした実直な行為、相手への思いやりから始まります。

著者は、コミュニケーションの可能性を狭める2つの要因として以下のものを挙げています。

  • 人としてのマナーを守らないこと。
  • 心をフラットにできないこと。

心をフラットにするためには、相手への区別や差別の心がないか、自分に問いかけるところから始めます。

 

相手を思いやるコミュニケーション


最初に集中すべきところは、相手が発する言葉や求めるもの、その人が伝えようとしているメッセージです。

さらに注意すべきことは、相手のコンディションがどんな状態なのかを把握することです。

向き合った人を見て次の情報を得ます。

  • 個性
  • 立場
  • 今の心情
  • 体調
  • 気分

相手のコンディションを察し、聞いて、相手の言葉を受け入れながら、慎重に言葉を選んで返すといった一連のやり取りをできれば、短い時間でもかなり深い会話が交わせるはずです。しかし、人は言葉や態度で簡単に傷つき、心を閉ざしますので言葉選びには注意が必要です。

コミュニケーションでは、「自分が主役」ではなく、「相手が主役」だと考える方が上手く行くのです。

 

言葉と内面が裏腹な時に相手の真意を汲むには


その答えは、発せられた言葉の中にのみあります。言葉を聞き、反芻すれば、次第に「相手の本当の心」を受け取る感覚を培う事ができると著者は言います。
言葉どおりに受け取って、その言葉通りに応えたと言うのに、相手の真意は全く反対のところにあった。というのはよくある話です。
対話を重ねて相手の心にわけ入っていくという行為は、その人が内面に守っているとても柔らかな部分に触れていくことです。だからこそ、細心の注意を払わなくてはなりません。
相手が内面を語る声を発したら、その言葉だけでなく、その人の表情や雰囲気、仕草などすべての情報を総じて考え、自らの答えと次の会話の展開までに責任を持たなければならないのです。

 

著者がこれまで多くのアスリートやアーティスト、著名人といった人たちにインタビューをできてきた訳が分かります。普段の仕事で自分はお客、社内の人たちにここまで考えて対話をしてきたかと言うと、全く自信がありません。

 

聞くために必要なこと

「聞く」ためにはまず集中力を高めて、「聞こう」と意識すること。全身で相手の話を聞こうとする。その意思がそのまま「聞いて理解する力」になります。
例えば、友人との会話でも聞くことを意識しながら話します。「自分はこの友人との会話で何を聞くのか」というテーマを持って臨んでみるのです。

学校の授業、ビジネスでの会議はもちろん、講習会や講演会に積極的に出て、相手は何を伝えたいのか、そこから私は何を受け取るのか、と常に考えてトレーニングをします。これを何度か繰り返すことで「聞く力」を養っていけます。

 

最後に著者が一番言いたかったことを書き出します。

いい聞き手になるには、自分を豊かにすることがとても大切になります。自分の世界が豊かであればあるほど、こちらから相手のスイッチを押すことも、逆に押してもらうことも容易になります。

人間の心の豊かさは、どれだけ好奇心を持っているかに正比例するのではないかと思います。好奇心は自分の知らないことを察知させ、それを知るための道筋を照らし、その道を進むための原動力になります。知らないことに触れたときの喜び、それが内面の豊かさを増していくのです。

 

対話力 私はなぜそう問いかけたのか (ちくま文庫)

対話力 私はなぜそう問いかけたのか (ちくま文庫)