ビジネスマンの皆さまへ捧げる読書日記

私が読んだ本のなかで役に立ちそうなものを紹介します

「ビジネスマンのための『行動観察』入門」を読んで

著者は、大阪ガス行動観察研究所所長をされているようです。

 

では早速始めます。

 

ヒックの法則

人間の情報処理能力がいかに限られているか、情報量が増えることによってどういうことになるか、という内容である。「ヒックの法則」にようると、「人間の意思決定にかかる時間は、選択行為におけるエントロピー量に比例する」

 

コンビニに入りやすい理由

コンビニエンスストアに入るのを躊躇する人はあまりいないと思うが、それには理由がある。通常、コンビニでは雑誌が置かれているコーナーが店の外から最も見やすいところに配置されている、コンビニの前を歩いている人からは、店内で雑誌コーナーにいる人がよく見える。もし、入口から見ると店員が13人いて、客が一人もいない店があったとすれば、あなたはこの店に入りたいであろうか?かなり勇気がいるはずである。コンビニは店員よりも客の数のほうが多いことを提示することで、入りやすい空間を演出している。

 

プロスペクト理論

これは、「人間は得をすることよりも、損をしないように意思決定する」ということである。

例えば、自分の持っている株の値段が上がったとしよう。まだ値段が上がる可能性があっても、早めに売ってしまって「得」を決定してしまおうとするのが人間である。なぜなら、もし株が下がってしまったら、いまの「得」を失って「損」をするかもしれないからである。逆に、株の値段が下がったらどうなるであろうか。この場合、このままではまだまだ下がる可能性があるのに、なかなか売ろうとはせずに損害を大きくするのが人間である。なぜなら、値段が下がった状態で売ってしまうと、自分の「損」が確定してしまうからだ。

 

人間が処理できる能力の限界

認知心理学において、人間の処理できる能力は限られており、「同時に7プラスマイナス2個」が目安といわれており、マジカルナンバー7と呼ばれている。

例えば、提供したい情報が 21個あるとする。これをただ並べるとお客さんはすべての情報に目を通さなければならないが、3 つにグルーピングすれば、お客さんはまずは大枠のグループにタイトルを見て目当てに情報のありかを探せばよい。

そして、それぞれのグループの中に情報が 7個あれば、処理する情報量は常に 7つ以内に納まる。これにより、目当ての情報が探しやすくなる。新聞には膨大な情報が掲載されているが、情報の内容(政治、経済、スポーツなど)によってグルーピングされているため、目当ての情報に到達しやすいのだ。

 

注意回復理論

疲れている人間が自然物を見ると集中力が回復するというもの

 

「私はすごい人間である」という思いを守る人

私が教育をした営業マンの中には、「別に私、今のレベルのままでいいんです」と言う人もいた。しかし、それは本音ではない。人間はみな、成功し、認められたいと強く願っている。そういうことを言う人も、「レベルアップして周りに認められる」ことが現実に起こることを望んでいる。

その人がそんな発言をするのは、「私はすごい人間ではない」ということを言っているのではない。全く逆である。「私は能力の高い人間ですし、その気になればその能力の高さを証明できますけど、いまはその能力を出せる環境ではないので、いまのままでいいんです」というにように、「私はすごい人間である」という思いを守るためにそういうことを言うのである。

ではそういう人にはどうすればいいのか?まずはノウハウに基づく基礎的な行動を一つでも取り入れて、小さくてもよいので成功を体験した上で成長を実感してもらうのがベストではないかと考える。成功するのが嫌な人は、どこにもいない。

 

優秀な営業マンの考え方

優秀な営業マンはみんな、「目の前のお客さんにどう喜んでいただくか」をベースに考えていた。「私は、自分がされたら嫌だろうな、ということは絶対にお客様にしません」という言葉を、優秀な営業マンのほとんどから聞いた。これが一番の基本であろう。

優秀な営業マンの言動には、営業マン本人が意識するかどうかに関係なく心理学的な裏付けがある。これはとても興味深い事実だが、心理学の知見に合致した行動を取り入れるだけではすぐに限界が来るであろう。

そういうテクニックだけを取り入れていると、お客さん中心思考がどこかに行ってしまい、「相手を自分の都合のよいようにコントロールしよう」という思考の罠に陥る可能性がある。こうった営業マンの考え方は、その態度からお客さんにすぐに伝わる。成績が伸びたとしても、焼き畑農業のような営業しかできないし、長期の信頼関係を作ることは難しいだろう。

 

ホワイトカラーの生産性

ホワイトカラーの生産性の部署同士での比較が困難である。「営業部が今年は人事部よりも成果を上げた」と言い切ることは難しい。同じ部署でも担当者によって役割が異なると、アウトプットの内容が異なる。

結局のところ、ホワイトカラーの生産性は個々の社員の問題である。個々の社員にとって「正味の時間」とは何をしている時間であるかをまず定義して、「正味の時間」は今何%であるから、これを一年後に10ポイント増やす、といった目標設定が必要になる。

つまり、他の社員やほかのチーム、他の部署と比較することなく、個々の社員が「自分が会社の成果に寄与する仕事」とは何であるかを見極めて、自分の中でどうやってその時間を増やすかを考える必要がある。最終的には自分で決めて自分で実行する、自律的な改善が必要となる。人間はすぐ比べたがるので、「あの部署より我々の部署は頑張っているかどうか」を知りたくなる。しかし、ホワイトカラーの生産性においてそれはご法度であり、そこからは何も生まれないと思われる。比較すべき対象は他の部署ではなく、自分自身の過去の生産性である。

オフィス観察を通じて大きな課題であると感じたのは、マネジメントである。例えば、「自分の部署の生産性向上に取り組む」にしても、「なぜ生産性を上げるのか」を社員にどう伝えるか、という問題がある。もし「生産性を上げて社員の数を減らす」という言い方をすれば、モチベーションが下がって生産性を上げるどころではないであろう。

「生産性を上げることで余暇の時間を作ってもっと家族サービスをしよう」「生産性を上げて得られた時間で、次のビジネスをみんなで考えよう」といたように、何らかの前向きな理由の説明が必要であろう。

さらには、マネジメント側のコミットメントが非常に重要である。生産性を上げる取り組みを実施するときに、トップが「まあ、やってみようか」ぐらいの気持ちだと、ほぼ失敗する。

ホワイトカラーの生産性向上においても、まずは業務実態や正味時間などの事実を把握し、その上で業務の「見える化」や自律改善活動などに取り組み、トップのコミットメントやオフィス環境の改善、ITの活用などを通じて全体の最適化を行う必要がある。さらには再び生産性が下がることのないよう、日々のチェックや改善の達成感を得るなどの継続する仕組みが必要である。

ホワイトカラーの生産性向上も、トップの強いコミットメントがないと、面倒なことはみんなやらない。するといつまで経っても最初のステップを踏み出せず、長期的には楽にならない。トップが自ら積極的に働きかけて社員に生産性向上のための行動を促すぐらいでないと、生産性向上はなかなか実現できない。

 

ラベリング効果

人間は「ラベリング効果」によって大きく影響を受ける。人は、その人に貼られた「ラベル」に沿って行動する傾向があり、「良いラベリング」は良い効果があるが、「悪いラベリング」は悪い効果をもたらす。

例えば、先生が生徒に「君たちは算数がすごくできるね」と言い続けるクラスと、「君たちは算数がダメだね」と言い続けるクラスがあると、前者のクラスでは生徒たちの算数の成績は良くなり、後者のクラスでは算数の成績は下がる。

この効果は、最近ではトイレ内の表示にも応用されている。出かけたときにトイレに入ったとする。一昔前のトイレには、「使用後は必ず水をお流しください」といった表示がよく貼ってあった。最近の表示は「トイレをきれいにお使いいただきありがとうございます」と書かれていることが多い。この二つでは、表示を作った人がトイレ利用者をどのような人だと考えているのかが、全く異なる。前者の表示では、トイレ利用者を「こちらが言わないと、あなたは水を流さない人だ」とみなしていると感じられてしまう。後者の表示では、「あなたはトイレをきれいに使う人ですよね」と考えていることが伝わってくる。「水を流さなくて汚す人」「きれいに使う人」のどちらをメッセージとして出すかによって、トイレでの行動が影響を受けるのもラ「ラベリング効果」である。